グレイトフルメソッドの猪上です
前回は、画廊喫茶閉店までのお話をしました
その後のことをお話ししていきますね
そのころ、世の中にインターネットが爆発的に普及したんです
Windows95、98あたりだったかな
僕も、見よう見まねでホームページをつくってみたんです
友だちの店のホームページだとか
あとはアーティストのホームページだったりとか
そんなことをしてたら、知り合いから声がかかって
「バイトでWebデザイナー、やれへんか」と
今でいうホームページデザイナーですね
「やるやる!」
バイトもやめたところだったので、即答でした
声をかけてくれた人の会社でアルバイトを始めたんですが
ITバブルに乗っかって、その会社が急成長したんですよね
僕、バイトで入ったのに、いつの間にか部下ができて
気付けば係長っていう肩書なんかもできて
課長になって、部長になって
5年ほどで、部下を30人ぐらい抱えるようになってました
そのころにはバイトじゃなくなってて
人生初のサラリーマン生活を経験したわけです
まあまあ、流されながら生きてるわけなんですが
いわゆるサラリーマンになったのは、これもいい経験かなと思ったからなんです
30前ぐらいまで、ずっと商売してきて
考えてみたら、サラリーマンをやったことなかったなって
やってみてもいいかなと思ったんですよね
なんだかんだ、会社が急成長する前から参加してた僕は
会社でも創業メンバーに近くて
社長と、まあまあ距離が近かったんですよね
その社長が、スタートアップに近いメンバーを相手に
毎週土曜日の朝8時ごろから、勉強会っていうのを開くようになりました
当時、すでに土日・祝が休みっていうのが当たり前ですよ
週休2日はサラリーマンをやってる理由の一つでもあったと思うんですが
僕は土曜日に勉強会、祝日も仕事をしてたので、休みは日曜日だけでした
勉強会の内容ですが、
毎回1冊、マーケティング関係の本が決まってて
その本の発表会みたいなものでした
勉強会前日に分厚いの本を渡されて
当日までに、内容をまとめるわけです
普段の仕事も忙しいのに、勉強会の準備もしてたんですよね
僕、マーケティングとか学んだことなかったので
なんでこんな小難しいこと言ってはるんやろうと思って
正直言うと、すごく嫌でした
なんでこんなことまでせなあかんねん
楽できるからサラリーマンしてるのに
ここでも勉強か
みたいに思ってました
このとき勉強したマーケティングの本っていうのは
例えばコトラーとかドラッカーとか、メジャーなやつです
現場で自分の経験から学んできた僕からすると
まあまあ机上の空論やなというのが感想でしたね
ただ、ここでランチェスターの理論を学んで
僕がやってきたのはランチェスターか!
っていうのは知りました
ITバブルで急成長した会社は、やがて上場しました
僕は、それほど株を持ってなかったので、大したお金になってないんだけど
20代で大金を手にする人々が出てくるんですよね
すごいな、会社って
上場したらこうなるんやなと思いました
ただ、20代とか若い時点で大金を手にしちゃう人には
まあまあ変な事件が起きてましたね
急に入院することになったり
急に事故ったり
人とのトラブルが起きたり
そんな人たちを横目で見ながら
僕はサラリーマンライフを淡々と
ブルーな土曜日の勉強会も淡々と
人間、何にでもだんだん慣れてくるので
とにかく淡々とやってたんです
不自由さは、もちろん感じてました
選択肢がない窮屈さみたいなものも
そこまでいいと思えないサラリーをもらい続けて、どうなんだろうって
かといって辞めて起業するのも、なかなか難しい
来月も給料をもらえる安心感って、すごいんですよね
僕が悶々としている間にも、会社はどんどんM&Aを繰り返します
よその会社を買いまくって
社内に知らない人が増えます
そんな会社を外から見ると、魅力的な会社に見えるんでしょうね
優秀な人もたくさん入ってきてました
会社は上場すると、株主を相手にするような目線になります
株価を上げないと、株主さんから怒られますからね
なので、M&Aとかニュース性のあるものが必要だったんです
そうなってくると、会社の上層部は「引き出し」の話ばっかりです
みんなYahoo!ファイナンスを見て
ずっと金の話、株価の話ばっかりしてました
で、気が付くと、その会社は民事再生になってました
上場して、社風がだいぶ変わったなと思ってましたが
中身がないっていうことが社内にも社外にもばれてしまって
どんどん求心力がなくなって
人が増えるばかりで、結束力なんてなくて
会社は、ふっと消えました
とりあえず、僕にも何人か部下がいたので
その人たちの再就職先を探して
さて、僕はどうしようかなと
この会社でのサラリーマン生活でよかったのは
ありとあらゆる業種の方のマーケティングのサポートをしてたので
いろんな業界のことを学ばせてもらってたことです
逆に違和感を持ったのは、例の勉強会です
もちろん学ぶことも多かったですが
お客さんと話して、ちゃんと買ってもらう
それこそが商いだと、それまでの経験から感じていた僕からすれば
みんな机上の空論が好きなんだなというのが正直な感想でした
じゃあ、マーケティングサポートで得た知識を基に起業するか!
と言いたいところなんですが
そんな急に起業できないですよね
お金がないんです
株を買わされて会社がつぶれたから
買った株は二束三文にしかなりません
いったん起業は諦めました
結局、直属の上司が会社をつくるっていうことで
そこについていくことにしました
元の会社では開発部門にいましたが
起業の夢は持ち続けていたので、将来に備えて営業を志望しました
最初の仕事は電話、テレアポですね
毎日100件から200件ぐらい電話をかけて
ポータルサイトの中の商品を売ってました
実体があるのかないのか分からないようなものです
Yahoo!が広告を売ってますよね
ああいうイメージです
基本、電話はすぐに切られるので
テレアポを繰り返して繰り返して
アポが取れるのが200件のうち1件くらい
電話だけでクロージングまで持っていけるのは
300件に1件、あるかないかでした
そこの会社の売り物に魅力がなかったこともあって
受注を取り続けるのは、まあまあ大変でしたね
僕自身、「今日も200件電話するんか」と思いながら
会社に行くのも嫌でした
結局、会社はホームページ制作会社みたいなことになって
売上は右肩下がりでした
社員はみんな、死んだサバみたいな目をしてましたね
目が開いてるけど、覇気がないんです
そうこうするうちに、管理部門みたいな人が入ってきて
よく分からない締め付けが生まれてきました
その管理の人が「引き出し」の話ばっかりしてるんですよね
口を開けば「うちの会社は金がない」「営業を取ってこい」
それ聞いて、やる気になる?っていう話です
そもそも商品の魅力、営業の仕方はどうなんだと
給料も当然、下がり続けます
ついに僕の給料は、上場企業時代の半分にまで下がりました
これは生活できんわと、退社を決めました
僕が辞めた後
見たくない現実から目を背け続けた結果
この会社もなくなってしまいました
さあ、いよいよ起業するか!
でも、給料半分以下に下げられて
貯金なんか全然なくて、かつかつの生活です
すぐに起業なんてできません
1社目にいたときの上司が起こしたのが2社目の会社だったので
僕はそれ以外のカルチャーを知らなかったんですね
もう一社だけ見ようと、僕は初めて転職活動をしました
結果、入れたのが、いわゆる老舗のECの会社でした
まあいや物販の会社です
入ってみて、あまりの文化の違いにびっくりしました
それまでの会社での勉強会もテレアポもつらかったですが
とはいえ、僕は自由にやらせてもらっていたんだと知りました
老舗のEC会社は、インドのカースト制みたいだったんです
アルバイトの人がたくさんいて
社員が数名いて
係長とか課長とか部長とかがいて
これがピラミッドをつくってるんです
ここで僕の魂は疲弊しました
周りは死んだイワシみたいな目をしてる人ばかり
よく分からない締め付けがあったり
どろどろした人間関係があったり
そんな中で、立ち回りのうまい人がいたり
ああ、嫌だな、これは違うなと思いながら
それでも毎日通ってました
業績もそれなりに上げていましたが
自分の覇気がどんどんなくなっていくのを感じました
ある日、両手両足に力が入らなくなりました
さすがにこれはまずいぞと思い、病院に行きました
MRIを撮ってみると、重度の首のヘルニアでした
両手両足の神経が圧迫されていたから
しびれて力が入らなくなってたんですね
お医者さんに、「これ、ぎりぎりですよ」って言われて
僕には、思い当たる原因がありました
ずっと重たい荷物持って、下向いて歩いてたんですよね
ああ、そういうことかなと思いました
この会社で廃人にされるのは、ごめんこうむるなと思いました
そこの会社は、最初はいい給料払っておいて
後からどんどん給料を下げていく会社で
貯金は、ほぼなかったです
でも、この会社に廃人にされるのだけは嫌やと思いました
1年で、その会社を辞めました
その後、会社がどうなってるかは分からないです
僕のサラリーマン生活は9年に及びました
サラリーマンには目に見えない鎖があって
ずるずる引きずって歩いていた気がします
鎖を切ろうとしても、切らせない何かがやってくる
すごく重たい、その鎖を切るのが大変でした
本当に大変でした
最後は、いっそのこと足ごと切ったれ! という感じでした
相当ビビりながらですが、僕はようやく鎖を切りました
ということで、お金がない中、ついに僕は起業することにしました
そのお話は次回にしますね
今日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました